年報政治学
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《特集》
福祉国家論からみる自由民主主義体制の存立構造
―政治システムのインプット、アウトプット、前提に注目して
加藤 雅俊
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2020 年 71 巻 2 号 p. 2_15-2_36

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抄録

本稿では、第二次世界大戦後の自由民主主義体制 (本論文では、とくに 「修正資本主義+代議制民主主義、すなわち資本主義社会における政治秩序」 に注目する) の存立構造とその揺らぎを、福祉国家論の観点から分析的に検討する。

 福祉国家とは、公共政策を通じて、経済成長を実現し、市民に社会的保護を提供することで、支持調達を確保する政治システムを指す。したがって、福祉国家論の知見を政治学的に再構築することは、第二次世界大戦後の政治秩序が円滑に機能してきた条件・メカニズムを明らかにする上で有益といえる。本稿では、自由民主主義体制が安定した段階を 「ケインズ主義的福祉国家」 として捉え、その諸条件を明らかにし、どのように正統性を確保してきたかを、政治システムのインプット、アウトプット、前提に注目して整理する。その上で、グローバル化とポスト工業化を背景に、福祉国家が 「競争志向の福祉国家」 へと変化していることを指摘し、それに伴い、政治システムの正統性を担保してきた三側面が揺らいでいることを確認する。最後に、新しい時代の政治秩序を構想する上での知見や自由民主主義体制の理論分析への知見など、本論文の理論的含意を検討する。

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© 2020 日本政治学会
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