都道府県の政策選択に関する先行研究は、知事と議会を別個に選出する二元代表制の下、両者の部門間関係に着目してきたが、複数の会派で構成されるという議会の特徴には十分な注意が払われていない。独任制の知事と異なり、議会は集合的意思決定を行う主体であり、知事と対立する場合に一体として行動できるかは議会内の細分化の程度に左右される。
そこで、本稿は、厳しい財政制約の下では、選挙制度に起因して知事と議会に政策選好の違いが生じ、財政規律を重視する知事と個別利益を求めて歳出の維持・拡大を図る議会の間に部門間対立が生じるとの先行研究の理解を前提に、議会の細分化が予算編成に及ぼす影響に着目して1990年代以降の都道府県を対象とするパネルデータ分析を行った。分析の結果、議会内の有効会派数と地方債発行額などとの間に逆U字型の関係が見られ、有効会派数が4程度のときに知事は重視する財政規律の確保が最も困難となることが示唆された。