年報政治学
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72 巻, 1 号
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《特集》
  • ―1990年代以降の日本を題材に
    山本 健太郎
    2021 年 72 巻 1 号 p. 1_15-1_39
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    日本の政党システムは、1994年の衆院の選挙制度改革を機に、それまでの一党優位体制から変化を遂げた。いわゆる政界再編を経て、2003年には自民党・公明党と民主党が政権を争う二大勢力体制へと収斂して、2009年には民主党が政権の座についた。しかし2012年には民主党が与党のまま分裂し、自民党の政権復帰後は非自民政党が分立してかつての一党優位体制とも重なるシステムとなっている。

     本稿は、こうした日本の政党システムの変容について、ヨーロッパ諸国を事例として示されてきた有権者レベルでの変容や、選挙制度改革に的を絞った説明では、特に2012年以降の変容をとらえきれないことから、システム内の政党間の競争の図式そのものがシステムの脆弱性を招きうるのではないかとの仮説を検証する。

     具体的には、選挙制度によって政党に大規模化の圧力がかかるものの、大政党が十分に支持を調達できない状況になると、並立制であることも手伝って第三極の小政党の参入を招くと主張した。大政党への短期的な支持の大小によって、システムの安定性が左右されうると考えられる。

  • 水島 治郎
    2021 年 72 巻 1 号 p. 1_40-1_61
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    オランダでは、1917年の憲法改正から現在に至るまで1世紀以上にわたり、各政党に1議席まで議席を配分する、いわば 「完全比例代表制」 が採られてきた。2017年下院選では、実に13の政党が議席を獲得している。本稿ではこの完全比例代表制の成立した歴史的背景を探り、「政党優位」 と 「議員の自律性」 をめぐるせめぎあいを振り返ったうえで、比例代表制導入後も政党にとらわれない 「優れた人物」 を議会に送ろうという動きが生じたものの、事実上挫折に終わったことを明らかにする。そして20世紀、完全比例代表制のもとであっても、必ずしも小党分立と連立政権成立の困難が生じてきたわけではないこと、その背景として、「柱」 社会の存在があり、主要勢力 (特にキリスト教民主主義勢力、社会民主主義勢力) が安定的に支持を確保し、連立政権の組み合わせも限定的であったことなどを示す。しかし 「柱」 社会が解体し、さまざまな新党が登場した21世紀においては、もはや既成政党の優位は自明とはいえなくなっており、小党分立などの完全比例代表制の負の側面が表面化する可能性が高いこと、他方、政党組織にとらわれない個性的政治家の台頭といった、制度導入時の意図が 「実現」 している面もあることを指摘した。

  • ―人民民主党をめぐる戦略と選挙連合
    岩坂 将充
    2021 年 72 巻 1 号 p. 1_62-1_80
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    本稿では、比例代表制を採用するトルコの選挙制度の特徴の1つであり、これまで政党政治に多大な影響を与えてきた全国得票率10%という高い閾値を持つ阻止条項が、近年その機能―小党乱立と国内少数民族であるクルド人に基盤を持つ政党 (クルド系政党) の議会進出の阻止―を低下させている点に注目し、その要因を明らかにすることを目的とする。本稿で指摘する要因は、クルド系政党やそれをめぐる有権者の戦略、そして2018年議会選挙から導入された選挙連合制度である。とりわけ人民民主党 (HDP) は、2015年6月議会選挙に際し、従来のクルド系政党とは異なりトルコのさまざまなマイノリティの権利擁護へと方針転換をしたことで支持の拡大に成功、さらには閾値を超え議席を獲得することで、長く政権を維持している公正発展党 (AKP) の勢力拡大を抑制できることを示した。選挙連合制度の導入とHDPの連合不参加の決断はこうした状況を加速させ、2018年議会選挙では明確なかたちで有権者の戦略投票、すなわちAKP抑制のためにHDPの閾値超えを意図した 「均衡のための閾値保険」 ともいえる投票をもたらした。本稿の事例は、とりわけ閾値とそれに影響を受ける政党獲得議席に焦点をあてた戦略投票が、選挙連合制度とともに阻止条項の機能低下を導いたとことを示すものである。

  • ―選挙不正認識ギャップ、権威主義の許容、非リベラル政党の台頭
    鷲田 任邦
    2021 年 72 巻 1 号 p. 1_81-1_104
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、政治的分極化 (党派的分断) がどのように民主主義を後退させるかを明らかにすることである。そのために、多国間パネルデータ (140国、1975~2019年、V-Dem/V-Party) と地域横断的なサーベイデータ (74国、2010~2020年、WVS/EVS) を用いて、マクロ・ミクロな観点から体系的分析を行う。まず、多国間データ分析を通して、エリートレベル・有権者レベルの政治的分極化が選挙の正統性を低下させ、民主的規範を軽視する非リベラル政党の政権獲得・維持に寄与すること、そうした非リベラル政権が民主主義 (特に司法・議会・メディアの自立性や法の支配) を浸食することを示す。そのうえでサーベイデータ分析を通じ、政治的分極化が選挙公平性認識の党派間のギャップ (与党支持者は選挙の公平性を高く評価し、野党支持者は選挙不正を疑う) を拡大するだけでなく、たとえクリーンな選挙を実施したとしても選挙が公平であるという認識を全体的に低下させること、そして、選挙の公平性認識の低下は、政治暴力や権威主義 (強権的リーダーや軍政) の許容につながることを示す。本稿ではさらに、政治的分極化の拡大要因 (選挙タイミングや政権汚職) や政治制度 (議院内閣制や小選挙区制のリスク) が民主主義の後退に与える影響なども検討する。

  • ―質的比較分析 (QCA) を通じた一考察
    新川 匠郎
    2021 年 72 巻 1 号 p. 1_105-1_131
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    欧州諸国では組閣に向けた政党間の連立交渉が常態化している。政権で得られる役職や実現できる政策を見定めるべく、交渉に各党は慎重を期すと考えられる。だが実際には組閣時間で国別の違いが見られる。なぜ組閣過程に違った特徴が生じるのか。先行研究は 「複雑性」、「不確実性」 の克服という理論枠組みに依拠して、組閣遅延の分析を行ってきた共通点がある。ただし、その実証分析では選挙後という不確実性の条件を除き、政党システムにかかわる各条件や制度的条件に関して異なる見解が示されてきた。これら分析での不一致について本論は、先行研究が各種条件を並列させて検討していたことに着目する。組閣遅延を生み出す複雑性と不確実性の条件は同質的でなく、さらに複数の結合条件を通じて影響するかもしれない。本論では 「質的比較分析 (QCA)」 を使い、こうした特徴について欧州の政権発足に至る困難な道のりの中で経験的に問うことを試みる。この結果、組閣遅延の前提 (必要条件) になる不確実性の結合条件を基に、複雑性にかかわる政党システムでの破片化と分極化が大統領の権限不在、二院制・連邦制の構造とも連動しながら組閣遅延の経路を作ることを浮き彫りにする。

《公募論文》
  • ―日露国境問題をめぐる国内対立
    醍醐 龍馬
    2021 年 72 巻 1 号 p. 1_132-1_154
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    明治初期の日露国境問題 (樺太問題) に関する先行研究では、明治政府に対する駐日英国公使パークスの樺太放棄勧告の影響が強調されてきた。これに対し国内要因に着目した本稿では、従来思想分析の対象に留まってきた黒田清隆の樺太放棄論が、政府内の重層的な対立構造のなかで政策実現していく政治過程を跡付けた。黒田は大久保利通に推され樺太専任の開拓次官に就任すると、組織内を対露宥和路線に統一した。さらに樺太開拓使と北海道開拓使の合併後は、札幌本庁から岩村通俊を駆逐し樺太放棄論で開拓使全体を纏めた。岩倉使節団外遊中の黒田は樺太放棄を建議し、外征派の外務卿副島種臣の樺太買収論、分界論と対抗した。そして、明治六年政変により副島から対露外交の主導権を奪い、外征優先ではなく内治優先に立脚する対露宥和路線を確立させた。最後には、木戸孝允ら政府内の慎重論を抑えながら自らと政策理念を共有する榎本武揚をロシアに送り込み樺太千島交換条約を結ばせた。こうして終止符が打たれた樺太問題を契機に大久保政権内に開拓使を基盤とした黒田グループが重要な位置を占め、そのなかにその後の対露外交で重要な役割を担う黒田、榎本、西徳二郎を中心としたロシア通の政策集団の原点が形成された。黒田とその周辺の位置付けを明治初期にまで遡り検討することは、長州閥中心で描かれがちな明治政治史の枠組みを薩摩閥の視点から再構成することにも繫がる。

  • ―基地規模と経済的便益
    篠本 創
    2021 年 72 巻 1 号 p. 1_155-1_178
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    日本の市民による自国政府を対象とした安全保障問題に関する抗議行動 (安保系抗議行動) は、どのような条件下において発生するだろうか。本論文では、基地政治研究で主張されてきた内容をもとに、在日米軍のプレゼンスの規模、具体的には米軍により利用される軍事基地・施設の規模と、それらに関連して発生する経済的便益の大きさに着目し、これらの要因と安保系抗議行動の発生件数の関係性について2005年から2018年までの全都道府県のデータを用いた計量分析により実証する。加えて、自衛隊の基地・施設の規模を独立変数として組み込むことにより、在日米軍の基地・施設がもたらす影響との比較検討を試みる。

     分析の結果、ある地域内部における在日米軍の基地・施設の規模が大きくなるほど、当該地域における安保系抗議行動の発生件数が多くなるということが示唆されたが、他方で、自衛隊の基地・施設の規模が安保系抗議行動の発生件数に影響を与える、という旨の仮説に合致する分析結果を得ることはできなかった。また、在日米軍の基地・施設に関連して発生する経済的便益がこの種の抗議行動の発生件数に影響を与えるという旨の仮説の妥当性には疑義が呈された。

  • 武田 健
    2021 年 72 巻 1 号 p. 1_179-1_201
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    EUの内部において、一種の同調圧力がかけられる時がある。その圧力は、EU全体の目標に対して積極的に取り組もうとする国々から消極的な国々に対してかけられ、その圧力の結果、消極姿勢を改めて、EU全体の目標にコミットするように行動を変化させる国々が出てくることもある。同調圧力とは実際にどのようにかけられることがあるのか。そして、どのような状況であればその圧力は効果を発揮しやすいのか。本論は、これらの問いに取り組み、EU内部で作用する同調圧力の理解の向上を目指した。

     本論が同調圧力の基底にある心理過程を理解し、その圧力が効果を持つ諸条件を推測する上で依拠したのは、認知・社会心理学の分野で発達してきた社会的アイデンティティ・アプローチである。経験的な観察対象としたのは、リスボン条約の策定に至る過程である。本論は、この交渉で実際にかけられた同調圧力の動態を、各国およびEUの公式文書や筆者によるインタビュー調査などに依拠しながら描き出し、その上で、EUに集う政治指導者のなかに、「私たちは一緒」 であるとの感覚が共有された者たちがおり、その者たちの間で、同調圧力が効果を発揮することがあるとの主張を提示する。

  • ―帝国議会開設から現在まで
    末木 孝典
    2021 年 72 巻 1 号 p. 1_202-1_224
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    本稿は、戦前・戦後を通じた日本の議会傍聴について、その実態を明らかにした上で公開性と権力監視という観点から意義を考察するものである。その結果、以下のことが明らかとなった。1) 戦前の傍聴人数は長期的に増加し、1日平均で衆議院844人、貴族院351人であったが、戦後はテレビ中継の開始などから減少し、近年は衆議院200人、参議院100人程度の水準である。2000年代以降、インターネット中継とそのアーカイブにより時間や場所を問わずに傍聴が可能になったことで情報の流通度が高まっている。2) 女性の傍聴に関しては、大正期からの女性参政権運動で要請対象になった貴族院の女性比率が高く、戦後は両院とも長く低迷したが、近年は女性の記者・公務員が増えたことで比率が高まっている。3) 戦前から議院秩序を重視してきた傍聴規定には今も座席区分や服装規制が残り、公開性を損なっている。

  • ―部門間対立の下で議会の細分化が財政支出に及ぼす影響
    藤井 大樹
    2021 年 72 巻 1 号 p. 1_225-1_251
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    都道府県の政策選択に関する先行研究は、知事と議会を別個に選出する二元代表制の下、両者の部門間関係に着目してきたが、複数の会派で構成されるという議会の特徴には十分な注意が払われていない。独任制の知事と異なり、議会は集合的意思決定を行う主体であり、知事と対立する場合に一体として行動できるかは議会内の細分化の程度に左右される。

     そこで、本稿は、厳しい財政制約の下では、選挙制度に起因して知事と議会に政策選好の違いが生じ、財政規律を重視する知事と個別利益を求めて歳出の維持・拡大を図る議会の間に部門間対立が生じるとの先行研究の理解を前提に、議会の細分化が予算編成に及ぼす影響に着目して1990年代以降の都道府県を対象とするパネルデータ分析を行った。分析の結果、議会内の有効会派数と地方債発行額などとの間に逆U字型の関係が見られ、有効会派数が4程度のときに知事は重視する財政規律の確保が最も困難となることが示唆された。

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