年報政治学
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《公募論文》
子どもの参政権の政治哲学的検討
―智者政批判との関係から
山口 晃人
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2021 年 72 巻 2 号 p. 2_161-2_184

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抄録

民主政論者は、知識や能力に応じて意思決定への影響力を不平等に分配する 「智者政 (epistocracy)」 を否定し、意思決定への影響力を平等に分配する 「普通参政権 (universal suffrage)」 を擁護している。その一方で、ほとんどの民主政論者は、子どもには有権者として必要な能力が欠けていることを理由に、参政権を大人に限定することを容認している。

 本稿では、民主政論者が智者政による能力に基づく政治的影響力の不平等分配を批判しながら、能力に基づいて子どもの参政権を否定することは、一貫性を欠いていると論じる。子どもの参政権剝奪を正当化可能な理由は能力以外にないと考えられるため、民主政論者は、以下の2つの道のいずれかを選ばなければならない。1つは、あらゆる能力による区別に反対し、子どもを含めた真の普通参政権を支持する道である。もう1つは、民主政の理念型から逸脱することを受け入れた上で、大人のみの普通参政権を支持する道である。本稿は更に、前者の道を選び、子どもに参政権を認めることが民主政論者にとって大きな負担にはならないことを示すとともに、後者の道を選んで、大人のみの普通参政権を支持する場合の難点を指摘する。

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