本稿は、軍事的脅威の高まりが、とくに日本の改憲世論に与える影響について、とりわけ2017年頃から発生した北朝鮮によるミサイル発射を事例にサーベイ実験を通じて検証した。先行研究では、軍事的脅威が高まると政府の支持が短期的に高まる「旗下集結効果」をめぐって理論的・実証的に様々な観点から検証されてきたが、軍事的脅威が個別具体的な争点態度に与える影響についてはさほど検討されてこなかった。そこで本稿では、緊急事態に際して政府から示されることとなった「Jアラート」を利用して、このような危機的メッセージを与える実験と、憲法改正に対する態度を測定するリスト実験を融合させることで、軍事的脅威と改憲態度の関連を明らかにした。また、ミサイル発射直後と、その半年後の二回に分けて同じ実験をすることで、その効果の安定性についても検討した。実験結果より、「どちらかといえば護憲」の態度を持つ人では、Jアラートの刺激を受けると改憲派に寝返る傾向にあることが明らかとなった。