2017 年 56 巻 6 号 p. 340-344
炭素を含むマルテンサイト鋼において,焼入れた際に生ずる自己焼戻しは部材の機械的特性を左右する重要な課題であり,工学的な観点から,自己焼戻しの程度を定量的に評価することが求められている。本研究では,bcc鉄中の炭素の拡散係数を基にして,焼入れ中に起こる自己焼戻しの程度を炭素元素の拡散面積で評価する方法を検討した。その結果,マルテンサイトの自己焼戻しは,500〜350℃の温度域を冷却する際に顕著に起こること,40℃/s以上の速い冷却を実現できれば,自己焼戻しの影響を200℃ −1 hと同程度またはそれ以下に抑制できることなどを明らかにした。