2017 年 56 巻 6 号 p. 352-360
オーステナイト系ステンレス鋼は,低温プラズマ浸炭を施すことにより,表面層に高硬さと耐食性とを兼ね備えた拡張オーステナイト相(S相)が形成されることが知られている。本研究では,高効率に安定したS相を形成させることを目的に,アクティブスクリーン法と直流低温プラズマ浸炭法を組み合わせた方法を用いて,SUS304およびSUS316鋼のS相形成に及ぼす処理温度ならびに処理ガス濃度の影響を調べた。得られたS相の厚さ,硬さ,格子定数および残留応力を測定すると共に,ボール・オン・ディスク試験を用いた耐摩耗性評価および塩水噴霧試験による耐食性の評価を行った。その結果,処理温度733 K,CH4ガス濃度10.5mass%で処理すれば,耐食性ならびに耐摩耗性共に優れたS相を効率よく形成させられることがわかった。