2019 年 59 巻 4 号 p. 222-229
高窒素オーステナイト鋼の著しく高い加工硬化能について,従来は窒素添加により転位の蓄積が促進されるためであると考えられてきたが,modified Williamson-Hall / Warren-Averbach (mWH/WA) 法により転位蓄積挙動を調査した結果,変形に伴う転位密度の増大において窒素添加鋼と無添加鋼で差異が認められなかった。高窒素鋼では著しく交差すべりが抑制されるため,形成されるプラナー転位列に起因して後続転位に強いバックストレスが負荷されることとなり,これが変形抵抗となることで加工硬化率が高まると推察された。