水稲は生育に比較的多くの水分を要求するが,複数のほ場で多量の用水を安定的に供給する水田灌漑は,収量増加に寄与する.ガーナ内陸低湿地において,用排水路や畦畔の地表面に自生植物を植栽することで,水田水利施設を補強する技術開発に取り組んでいる.補強効果を長期にわたり持続させるためには,適期かつ適切な植生の維持管理作業が重要となる.現地に自生する植物群落の特性に関して,裸地状態の水路天端への侵略性は,ギョウギシバ(Cynodon dactylon),オキナワミチシバ(Chrysopogon aciculatus),イヌシバ(Stenotaphrum secundatum)の順に大きくなった.群落構造は,地上部はイヌシバの新鮮重が大きく,地下部はオキナワミチシバの新鮮重が大きかった.また,3つの植物は全て根群域が表層10cmに集中して分布していた.植生管理作業をせずに1年間放置した場合,ギョウギシバの成立群落に侵入した雑草は,他の2つの植物群落に比べると最少で,合計した新鮮重も最も小さかった.以上の結果から,植栽と補植ならびに手取り除草と手鎌による刈込の時期や回数などを定めた植物群落の維持管理計画の妥当性を実証し,成立群落の構造や安定性といった特性を明らかにすることができた.