熱帯農業研究
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原著論文
沖縄におけるピタンガ(Eugenia uniflora L.)品種‘Lover’と‘Vermilion’の果実の生長と品質
米本 仁巳緒方 達志香西 直子近藤 友大樋口 浩和野村 啓一
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2009 年 2 巻 1 号 p. 8-14

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抄録
沖縄で有望な熱帯果樹のひとつとしてピタンガの優良品種‘Lover’と‘Vermilion’をカリフォルニアから導入し,果実の生長と品質について調査した.石垣島では,春(4~5月)と秋(10~12月)の年2回の収穫が可能であり,酸含量は春果と秋果ともに0.8%程度で差が無く,可溶性固形物含量は春果12.0に対し秋果は17.0で,秋果の方が甘く美味であった.春果は開花後50日頃,秋果は40日頃の果実生育後期に果皮色が緑色から黄色く(a*値11.2,b*値32.1)なり,その後は約2日間隔で橙色,赤色,暗赤色(a*値17.5,b*値11.7)と急速に変化して落果した.2006年の春果と秋果ともに,果実生育に必要な日平均気温の積算温度は約1200℃であった.ピタンガ果実中の有機酸はほとんどがリンゴ酸であり,その含量は果実生育後期に果皮色が緑色から黄色に変化する頃にピークとなり,その後暗赤色となって落果するまで急激に減少した.可溶性固形物含量は橙色時から急速に増加し,落果時にピークとなった.したがって,糖酸比(Brix/酸含量)は橙色時の4から落果時に19へと急速に増加し,落果直前の果実を収穫することで最高の食味が味わえると考える.ピタンガの果汁にはショ糖がほとんど存在せず,ブドウ糖と果糖がほぼ等量含まれていた.ピタンガ果実は,ポリフェノール含量が多いといわれるグアバより多くのポリフェノールを含んでいることがわかった.種子の重量は果実の10~20%程度と高いことがわかった.官能試験では,‘Lover’と‘Vermilion’は沖縄在来種に見られる果実のえぐみや樹脂臭が少なく,美味であると評価された.このことから,これらの品種は沖縄での新規導入品種として有望であるといえる.
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© 2009 日本熱帯農業学会
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