2018 年 39 巻 4 号 p. 163-171
フェノール樹脂の構造-機械特性相関を原子・分子レベルから理解することを目的とし,フェノールとホルムアルデヒドに擬似架橋反応を適用し作成したフェノール樹脂架橋モデルについて,全原子分子動力学シミュレーションによる解析を行った。フェノール樹脂モデルを一軸伸長変形することで応力-ひずみ特性を算出し,線形弾性領域を解析することで引張弾性率を推定した。線形領域における弾性率と粒子間相互作用の解析を行った結果,延伸によって誘起された結合相互作用の配向変化が弾性発現に強く影響していること,水素結合などの長距離相互作用や特定領域における応力集中が弾性発現に及ぼす影響は小さいことが明らかとなった。