ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
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報文
  • 一藁 海都, 加茂 芳幸, 鈴木 祥仁, 松本 章一
    2025 年 46 巻 3 号 p. 116-126
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/29
    ジャーナル 認証あり

    易解体性接着技術を利用すると,製品の使用中に必要とされる接着構造物の一定強度を保ちながら,かつ使用後に外部刺激を加えることによって容易に解体でき,材料や部品を回収することが可能になる。本研究では,保護基の一種であるBOC 基を側鎖に含むポリメタクリル酸(2-tert-ブトキシカルボニルオキシ)エチル(PBHEM A ) をエポキシ接着剤に添加した易解体性接着材料の接着特性ならびに加熱後の解体挙動を検討した。以下の2種類の異なる方法でエポキシ接着剤にPBHEM A を添加して冷間圧延軟鋼板(SPCC)を被着体として用いたせん断 接着試験片を作製し,初期の接着特性ならびに200℃で加熱解体処理後の接着特性を比較した。1つはエポキシ樹脂とアミン硬化剤を混合する際にPBHEM A とエポキシモノリスフィラー(EM フィラー)を同時に添加する方法(直接混合法)であり,もう1つはエポキシモノリスの空隙にPBHEM A を予め充填した後に接着剤と混合して硬化する方法(充填フィラー法)である。PBHEM A を接着剤に添加すると,解体処理の加熱時間に応じてせん断接着強度が低下した。100℃で硬化接着後の状態ではBOC 基が未反応のまま保持されていること,ならびに200℃で解体処理を行った後にはBOC 基が脱保護されていることを確認した。接着剤とEM フィラーならびにPBHEM A の配合比や配合方法,および解体条件などを変えてせん断接着強度の変化を詳しく検討したところ,PBHEM A をエポキシモノリス細孔にあらかじめ充填した場合と直接混合した場合のいずれも類似した解体挙動を示した。種々の配合条件に対する接着剤成分のガラス転移温度,エポキシ接着剤とPBHEM A の相互作用,ならびに解体挙動の関係について考察した。

  • 三木 恭輔
    2025 年 46 巻 3 号 p. 127-137
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/29
    ジャーナル 認証あり

    架橋度の異なる各種のエポキシ樹脂試料の粘弾性挙動を解析することによって, ガラス転移領域におけるTg- レス化現象の生成機構を調べた。粘弾性挙動の解析には網目構造の架橋度合いに関連する構造パラメータを含む統計力学モデルを用いた。このモデルを使って導いた損失ずり弾性率と緩和要素の分子量との関係式を利用して,多くのエポキシ樹脂硬化物の粘弾性挙動を解析した。その結果, 網目構造の架橋度合いの増大に伴って架橋基に繋がっている線状セグメントの分子量の減少とガラス転移点における緩和要素の分子量の増大を生じることが確認された。Tg -レス化現象はこれらの隣接する緩和プロセスの緩和要素の分子量の差と密接な関係があると推定される。

  • 水﨑 真伸, 岡本 一男, 柴田 俊博
    2025 年 46 巻 3 号 p. 138-147
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/29
    ジャーナル 認証あり

    液晶材料中に導入する減粘材化合物は,液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)の応答特性を改 善するための構成化合物である。しかしながらこれまでに用いられている減粘材化合物の多くは,分子末端にアルケニル基(ビニル基)を有するため,紫外光が長時間照射されるとLCD の表示性能が低下する。したがって,PSA(Polymer Sustained Alignment)技術あるいは自己配向技術など,紫外光を照射することで液晶層中の重合性モノマーの重合により,高分子層を形成させる必要のある表示モードでは減粘材化合物を使えず,応答特性は十分でなかった。今回我々は,アルケニル基を有さない新規の減粘材化合物C3-CyFF-Cy-C3(Cy はシクロへキシレン基,C3 はプロピレン基,F はフッ素基)を開発した。C3-CyFF-Cy-C3 は28.6℃~ 42.3℃でネマティック相を示すことを確認した。この温度範囲は,ディスプレイの実使用温度範囲をカバーする。したがって液晶材料の液晶性を崩すことなく扱える化合物である。C3-CyFF-Cy-C3 を減粘材化合物とするPSA モードおよび自己水平配向モード用液晶材料を調整し,液晶セル評価を行った。高分子層形成のための紫外光照射前後で電圧保持率を確認したところ,照射前後で違いはなかった。これより十分な紫外光耐性があることを確認した。また液晶セルの駆動電圧範囲,コントラスト比,応答速度についても,従来のアルケニル基を有する減粘材化合物を使用した場合と同等であった。さらに1,000 時間のバックライト曝露試験でも,電圧保持率の低下はなかった。これらの結果より,今回開発した減粘材化合物を用いることで,PSA モードや自己配向モードなどの高分子層形成が必要なLCD でも,高速応答にできることを確認した。

  • 岩村 武, 森山 崇, 宮坂 哲哉, 足立 馨
    2025 年 46 巻 3 号 p. 148-156
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/29
    ジャーナル 認証あり

    メタノール/蒸留水(v/v=1/2)にポリビニルアルコール(PVA)を加えて撹拌した溶液に、テトラメトキシシラン(TMOS)とアントシアニンを加えて1 時間撹拌した。この溶液を60℃で2 週間静置した後、さらに60℃で48 時間減圧乾燥することにより対応する有機-無機ポリマーハイブリッド(PVA/SiO2=5/5)を得た。得られたポリマーハイブリッドをpH 1.97、pH 6.74、およびpH 12.38 のそれぞれの緩衝溶液に浸漬したところ、pH 1.97 では赤紫色、pH 6.74 では橙色、pH 12.38 では黄色を示した。PVA/SiO2=9/1 の有機-無機ポリマーハイブリッドフィルムを用いてpH 1.94 からpH 6.01 の522 nm における吸光度を測定したところ、pH 値の増大に伴って吸光度が減少する傾向が認められ、有機-無機ポリマーハイブリッドフィルムがpH 測定に活用できる可能性が認められた。

  • 下野 智弘, 有田 和郎, 山口 純司, 大津 理人, 鈴木 悦子, 岡本 竜也, 秋元 源祐
    2025 年 46 巻 3 号 p. 157-170
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/29
    ジャーナル 認証あり

    アミノフェノール類を出発原料とし,多段階の合成工程を経て,一つの芳香環上にアリルオキシ基とマレイミ ド基を有する構造を単位構造とするマレイミド樹脂を合成した。当該マレイミド樹脂は,部分構造として分子内に結晶性の高いN-アリール型のマレイミド構造を有するものの,アリルオキシ基の導入によって低融点またはアモルファス性を示し,溶剤への良溶解性や低溶融粘度で良ハンドリング性が実現された。またその硬化物のガラス転移温度は350℃を超え,かつ,熱重量分析でも高い耐熱分解性を示したことから,物理的耐熱性と化学的耐熱性を高いレベルで兼備することが確認された。硬化反応に際しては,アリルオキシ基のClaisen 転位を伴い,これがマレイミド基とも反応することによって,硬化物の機械強度向上に資するネットワーク構造が形成されていることが示唆された。

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