ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
最新号
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報文
  • 田島 怜奈, 石坂 祥吾, 中川 慎太郎, 吉江 尚子
    2024 年 45 巻 2 号 p. 66-75
    発行日: 2024/03/10
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    水素結合などの動的結合により架橋された高分子は自己回復性等の動的力学特性を示し,長寿命な材料として期待されている。一般に,amide などの剛直な水素結合性基の導入密度を増加させると架橋高分子の動的特性は低下する傾向にあり,力学強度と動的特性のトレードオフを解消する設計指針が求められている。近年,我々はvicinal diol(VDO)間の多重水素結合が柔軟で多様な結合モードを示すことを見出した。VDOで修飾したポリマーは高靭性でありながらも自己修復性を示し,上記のトレードオフが解消されていることが示唆されたが,その機構は未解明である。本研究では,構造柔軟な多重水素結合性基であるVDO で修飾されたポリマーと,剛直な多重水素結合性基であるamide を有するurazole で修飾されたポリマーを合成し,力学特性を比較した。

総説
  • 新居田 恭弘
    2024 年 45 巻 2 号 p. 76-86
    発行日: 2024/03/10
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    フーリエ変換型赤外分光光度計(FT-IR)は製品中に混入または製品表面に付着した異物の組成分析に広く使用される。FT-IR は有機化合物と一部の無機化合物に関する化学的な情報を短時間で得られるという利点のため広く利用される。本稿では,初学者向けに解析の基礎となる赤外分光法の原理,定性的な分析の概要,データベース検索とスペクトルの読み方を概説する。次に異物分析で最も頻繁に検出される14 種類の高分子に関して,FT-IR で取得した高分子の赤外スペクトルを示し,それぞれのスペクトルにおける主要なピークの帰属とポリマーの分類方法を解説する。

総合論文
  • 橋本 裕輝
    2024 年 45 巻 2 号 p. 87-96
    発行日: 2024/03/10
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    半導体は1947 年,アメリカのBell 研究室で発明され,以降,用途の多用化,処理速度,処理量の要望に応じ進化,発展してきた。半導体の変遷はトランジスタの小型化と電子回路パターンの集積化の達成に依存する。1980 年代からはそれまでの微細化技術に加え,安価に大量に生産することが要求特性に組み込まれた。そのため,歩留まり対策として設備のクリーン化,シリコンの洗浄,材料の高純度化が求められるようになった。本論文では,はじめに半導体前工程における製造概略を述べ,ウェーハの洗浄,研磨,リソグラフィーの仕組み,エッジング,光源に分け,使用される材料を解析し,その効果を論じていく。

  • 中西 政隆
    2024 年 45 巻 2 号 p. 97-111
    発行日: 2024/03/10
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    近年 高速通信市場の拡大に伴い,電子材料に使用される樹脂には低誘電正接の特性が重要視されている。特にプリント配線板用途においてはその影響は顕著であり,一般に使用されているエポキシ樹脂に代替される各種の低誘電材料が提案されている。その中でマレイミド樹脂は高い耐熱性と共に低誘電正接を達成できる材料であり,かつ多様な反応性を有することから注目されてきている。本稿では昨今注目されているマレイミド樹脂の構造と特性の関係,各種硬化系における特性や配合について解説する。

解説
  • 中村 佳樹
    2024 年 45 巻 2 号 p. 112-118
    発行日: 2024/03/10
    公開日: 2024/04/05
    ジャーナル 認証あり

    近年,低炭素社会の実現に向けて,エネルギーを有効に活用するためのパワー半導体の重要性は非常に高まっており,Si(シリコン)よりも高効率を実現できる次世代半導体素子として,SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)の応用が盛んに検討されている。SiC やGaN の応用とともに,パワーデバイスには高耐熱性などの特性が要求され,パワー半導体用エポキシ樹脂封止材料を開発し,いくつかの要因を見いだした。まず,半導体封止材料の低イオン不純物,高Tg はHTRB などの信頼性を向上させる。第二に,半導体封止材とPKG 部品(Cu,SiC など)との線膨張係数(CTE)差を小さくすることが,温度サイクルにおける重要なポイントである。第三に,高Tg と高耐熱性を両立できる剛直なビフェニレン骨格を持つ新しいタイプの樹脂構造を見出した。さらに,半導体封止材料は世界的な環境保全対策や将来の発展にも貢献することが期待される。

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