ビトリマーは,動的共有結合交換反応により自己修復性,再加工性,形状記憶性,ケミカルリサイクル性などの優れた資源循環特性を有する一方で,十分な強靭性を実現することが課題であった。本研究では,環状分子のスライド運動を特徴とするトポロジカル超分子化合物,ポリロタキサン(PR)をビトリマーネットワーク内に均一分散させることで,ヤング率を維持したまま破断伸度を最大5.3 倍,破壊エネルギーを約3 倍向上させることに成功した。さらに,PR の導入により結合交換反応が促進され,自己修復速度は10 倍以上,ケミカルリサイクル速度は10 倍以上向上した。また,複雑な形状記憶・再記憶機能や高い溶接性を示すことに加え,従来のビトリマーでは見られなかった海洋生分解性も発現した。これらの結果は,PR がビトリマーの強靭性と資源循環性を高次元で両立させる革新的な改質剤であることを示しており,構造材料,接着材料,複合材料など幅広い分野への応用が期待される。
本検討では,モビリティ分野で求められる軽量化を背景に,機械学習を活用して低比重かつ高弾性率の熱硬化性樹脂を開発した。従来,樹脂では比重を下げることと弾性率を高めることがトレードオフになりやすく,両立可能な分子設計が課題であった。そこで,機械学習により比重・弾性率および弾性率を比重で除した比弾性率を予測し,コンピュータ上で生成させた多数のバーチャル分子の物性予測結果から有望分子を提案させる分子設計フローを構築した。その結果,脂環構造やアニリン構造が高比弾性率化に有効であることが示唆され,その知見をもとに新規エポキシ樹脂硬化剤ADF を設計・合成した。ADF の硬化物は低比重かつ高弾性率を示し,従来系と比較して比弾性率は23%向上した。最終的にADF をさらに改良し,高比弾性率かつ良好なハンドリング性も備えた樹脂の開発に成功しており,モビリティ用複合材料マトリックス樹脂への応用が期待される。また,情報科学を駆使した本開発プロセスは,材料開発のさらなる効率化につながる可能性を示した。
五員環カーボナートを側鎖に有するポリメタクリレートの溶解性を向上するべく,低分子量化を目指してグリシジルメタクリレート(GMA)のラジカル重合の条件を検討した。最初に,連鎖移動剤を使用し低分子量のポリ(グリシジルメタクリレート)(PGMA)を合成した。続いてエポキシドとCO₂との環化付加反応により五員環カーボナート側鎖を有するポリ(メタクリレート)(PMA5CC)へと変換した。得られたPMA5CC は低分子量であり,非プロトン性極性溶媒のみならず,一部の低極性溶媒にも良好に溶解した。また,五員環カーボナートを有するメタクリレートモノマー(MA5CC)を連鎖移動剤存在下で直接ラジカル重合することでも低分子量のPMA5CC を直接合成でき,PGMA 経由で合成したものと同様の溶解性を示した。一方で,GMA を過剰量のアリル化合物の存在下でラジカル重合を行うことでも低分子量の共重合体が得られ,PGMA と同様に環状カーボナートに誘導できた。さらに,低分子量のPMA5CC および共重合体は,それぞれジアミンと反応させることで五員環カーボナートの開環反応を介して架橋し,ネットワークポリマーを形成した。
メソゲン骨格を有するシアネートエステル(DPC-CN)の配列構造,耐熱性,熱伝導性,強靭性及び接着特性 が評価された。DPC-CN は硬化過程において,局所配列した液晶ドメインを形成し,汎用ビスフェノールA 骨格シアネートエステル系と比較して,熱伝導率は1.6 倍,破壊靭性値は約10 倍に達した。一方で,液晶配列はシアネートエステルの接着強度の低下を招いた。また,DPC-CN に対するエポキシ変性の効果についても検討した。ビフェニル型エポキシ(DGEBP)変性により,DPC-CN 硬化系の破壊靭性値及びTg は低下するものの,接着強度の若干の改善が見られた。さらに,DGEBP 変性系の硬化条件を高温に設定し,接着剤層を等方化させることで,接着強度の大幅な向上が達成された。
エポキシ樹脂に長鎖脂肪族構造で構成される反応性フレキシブルオリゴマーをブレンドし作製したエポキシ硬化物の相構造と破壊靭性について検討した。イミド環を両末端に導入したイミド系反応性フレキシブルオリゴマーはイミド環導入前に比べてエポキシ樹脂との混和性が高かった。硬化物はさまざまな温度で前硬化し,同じ温度で後硬化して作製した。エポキシ/ 反応性フレキシブルオリゴマーブレンド硬化物は重合誘起相分離を生じ,海島構造を形成した。特にエポキシ/ イミド系反応性フレキシブルオリゴマーブレンド硬化物は相対的に微細で前硬化温度に依存しない相構造を形成した。破壊靭性は変位速度10 mm/min では前硬化温度に依存しなかったが,低変位速度(0.5 mm/min)では前硬化温度の影響を受けることがわかった。破壊靭性の前硬化温度依存性について,動的粘弾性を踏まえて考察した。
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