2019 年 40 巻 2 号 p. 88-96
ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)は電気絶縁性に優れることから電車線路部材でも多く使用されている。しかし,循環電流防止形曲線引金具においてGFRP 部分で破断した事故例があり,破断したGFRP の破面はその大部分が平滑な脆性破壊の様相を呈していた。そこで,同金具に使用されているGFRP 製の芯材に影響する環境因子として硝酸および水分に着目し,金具の使用状況を模擬した応力負荷を組み合わせた試験を行い,物性への影響を評価した。その結果,応力負荷がない条件で硝酸および水分へ暴露した場合,物性試験の結果としてGFRP の一般的な破壊と同様の破面を示し,硝酸および水分の影響はほとんど確認されなかった。一方,応力負荷と硝酸および水分への暴露を組み合わせた条件では,暴露後の物性試験の結果として,GFRP の物性低下を示すとともに破壊時の破面が実用条件と同様の平滑な脆性破壊の様相を呈する場合が見られた。