2021 年 42 巻 2 号 p. 51-62
ポジ型フォトレジスト材を用いたドライフィルムを作製できる様になれば,新たなニーズの展開が期待できる。著者らは柔軟性をもつレジスト用ノボラック樹脂の開発を試みる中で,フェノール(PhOH)成分として分子鎖骨格に嵩高いイソプロピリデン基を一つもつビスフェノールC(BisC)とグルタルアルデヒド(Glu)からなるBisC/Glu ノボラック樹脂は,検討してきた中で最高の柔軟性と高い描画能を発現することを見出した。本報では,イソプロピリデン基を二つもつビスフェノールP(BisP,1,4- ビス[2(- 4- ヒドロキシフェニル)-2- プロピル]ベンゼン)と,その構造異性体であるビスフェノールM(BisM,1,3- ビス[2-(4- ヒドロキシフェニル)-2- プロピル]ベンゼン)を用いたBisP/Glu とBisM/Glu ノボラック樹脂を新たに合成し,それらの性質を検討した。併せて,PhOH 成分に3 ~10 mol%量のレゾルシノール(Res)もしくはピロガロール(PY)をコモノマーとしてそれぞれに添加したノボラック樹脂もまた検討した。コモノマー未添加のノボラック樹脂の場合,ほとんどがアルカリ水溶液に不溶となった。一方,コモノマーを添加したノボラック樹脂は,Mw が3600 ~15000 の高分子量体でありながらアルカリ水溶液に可溶となり,Mw が増すに従いアルカリ水溶液溶解速度(DR)は遅くなる一般的なレジスト剤としての相関関係を示した。折り曲げ試験の結果より,DR 測定の可能なBisP あるいはBisM 系ノボラック樹脂の柔軟性は,BisC/Glu ノボラック樹脂の柔軟性に届かず,ホルムアルデヒド(Form)と組み合わせたBisC/Form ノボラック樹脂と同程度であることが分かった。本ノボラック樹脂の柔軟性がBisC/Glu ノボラック樹脂のそれに至らなかった原因は,水素結合の形成数が及ばなかったことであると考えた。水素結合形成能の指標として,ノボラック樹脂を構成するO/C 元素比を算出した処,上記を支持する結果が導かれた。