2023 年 44 巻 1 号 p. 41-53
エポキシ樹脂との架橋反応部位に,水酸基が生成しない硬化システムとして報告された,活性エステル型硬化剤の基本技術を発展させ,エレクトロニクス実装材料に対応できる新規の多官能オリゴマー型の活性エステル型エポキシ樹脂硬化剤を開発した。一般的なフェノールノボラック硬化系と比較して,高いガラス転移温度を維持したまま,大幅な低誘電率,低誘電正接化を実現した。中心部に位置するジシクロペンタジエン骨格の剛直性と小さなモル分極率と大きなモル体積,末端封止成分のナフタレン骨格の剛直性や配向性が相まって,耐熱性を維持したまま,優れた低誘電率および誘電正接を示すと考察した。この技術により,エポキシ樹脂組成物では,これまで達成困難と考えられていた高周波対応プリント配線板への実用化が進み,高速通信規格5Gの普及を加速させ,テレワークに代表されるWithコロナの世界を支えるに至っている。