2025 年 46 巻 3 号 p. 138-147
液晶材料中に導入する減粘材化合物は,液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)の応答特性を改 善するための構成化合物である。しかしながらこれまでに用いられている減粘材化合物の多くは,分子末端にアルケニル基(ビニル基)を有するため,紫外光が長時間照射されるとLCD の表示性能が低下する。したがって,PSA(Polymer Sustained Alignment)技術あるいは自己配向技術など,紫外光を照射することで液晶層中の重合性モノマーの重合により,高分子層を形成させる必要のある表示モードでは減粘材化合物を使えず,応答特性は十分でなかった。今回我々は,アルケニル基を有さない新規の減粘材化合物C3-CyFF-Cy-C3(Cy はシクロへキシレン基,C3 はプロピレン基,F はフッ素基)を開発した。C3-CyFF-Cy-C3 は28.6℃~ 42.3℃でネマティック相を示すことを確認した。この温度範囲は,ディスプレイの実使用温度範囲をカバーする。したがって液晶材料の液晶性を崩すことなく扱える化合物である。C3-CyFF-Cy-C3 を減粘材化合物とするPSA モードおよび自己水平配向モード用液晶材料を調整し,液晶セル評価を行った。高分子層形成のための紫外光照射前後で電圧保持率を確認したところ,照射前後で違いはなかった。これより十分な紫外光耐性があることを確認した。また液晶セルの駆動電圧範囲,コントラスト比,応答速度についても,従来のアルケニル基を有する減粘材化合物を使用した場合と同等であった。さらに1,000 時間のバックライト曝露試験でも,電圧保持率の低下はなかった。これらの結果より,今回開発した減粘材化合物を用いることで,PSA モードや自己配向モードなどの高分子層形成が必要なLCD でも,高速応答にできることを確認した。