抄録
超臨界流体技術を応用して,フェノール樹脂製品を対象とした新規ケミカルリサイクル技術が開発され,実用化に向けた取り組みが進められている。本ケミカルリサイクル技術の最大の特徴は,超臨界または亜臨界状態の水/フェノール混合溶媒(2成分系溶媒)を反応溶媒として用いることで,硬化したフェノール樹脂を10 ~ 20分間程度の短い反応時間で完全に分解して,化学原料として再生レジンを高収率で回収できることである。反応速度論的な解析により,フェノール樹脂硬化物の粒子径やガラス転移温度と反応速度との関係,あるいは反応温度と反応速度との関係が定量的に評価されている。また,再生レジンを原料とした再生製品はバージン製品と同等レベルの特性であり,ケミカルリサイクルの工程を繰り返しても,再生レジンや再生製品の特性が変化しないことが実験的に検証されている。流通式ベンチプラントでの基礎検討を経て,年間数百トンのフェノール樹脂の廃棄物を処理する能力がある,実証プラントが建設された。現在,量産技術の開発が進められている。