ネットワークポリマー
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特集号: ネットワークポリマー
38 巻, 1 号
ネットワークポリマーを支え、役立つ高分子合成-基礎と応用
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
  • 藤田 健弘, 山子 茂
    2017 年 38 巻 1 号 p. 4-13
    発行日: 2017/01/10
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    リビングラジカル重合(LRP)はラジカル重合において分子量と分子量分布,およびブロック共重合体を通じてモノマー配列を制御する合成法である。1993 年のGeroges らの報告以来,新しい方法の開発と高分子材料への応用が広がってきている。本稿では,LRP の鍵である休止種の活性化に焦点を絞り,最近の二つの進歩について紹介する。一つは,光を用いる休止種の活性化である。これにより,生成ポリマーの構造の制御の向上や,触媒の低減化などが可能になってきている。もう一つは非共役モノマーのLRP である。非共役モノマーの成長末端ラジカルは共役モノマーの末端に比べて不安定であり,休止種の活性化が難しいため,その進展は限られていた。しかし,重合系をうまく選択することで,さまざまな非共役モノマーがLRP に利用できるようになってきている。これらの進展により,LRP の可能性がさらに広がってきている。

  • 但木 稔弘
    2017 年 38 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2017/01/10
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    アニオン重合は,重合可能なモノマー種が多く多彩な構造のポリマーを合成することができることと,それらの多くのモノマー類の重合反応において『リビング重合』ができることが大きな特徴である。リビング・アニオン重合技術が開発されてから約50 年を経るが,同技術は劇的に発展して工業的にも種々のポリマーを合成するために活用されてきた。本稿では,アニオン重合の基礎的な内容について簡単に言及した後,最近の工業的なアプリケーションとして「低燃費タイヤ用末端機能化エラストマー」と「半導体パターニングに用いられるブロック共重合体」への適用例について述べる。   

  • 青島 貞人, 金澤 有紘, 金岡 鐘局
    2017 年 38 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2017/01/10
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    カチオン重合は最も古くから知られている重合法の一つであるが,生長種の不安定さから,他の重合系に比べ重合制御はこれまであまり進んでいなかった。しかし,リビングカチオン重合が見いだされ構造や分子量の制御されたポリマーの精密合成が可能になったことと,官能基を有するポリマーが開拓されたことにより,多くのブロック・グラフトポリマーの選択的合成が可能になり,一部工業化もされるようになった。また,多くの刺激応答性ポリマーも合成されるようになり,リビング重合ならではの高感度応答,自己組織化,多段階応答などが見られるようになった。さらに最近,新しいモノマーや重合法(とくに低環境負荷型,簡便な手法など)が次々に開拓され,星型ポリマーをはじめとする機能性材料が続々と合成されている。その例としては,各種植物由来モノマーの制御重合,ラジカル・カチオン共重合,刺激応答性/選択的な分解性を有するポリマーの精密合成,モノマー選択重合,ビニル付加・開環同時カチオン共重合などが可能となった。本報では,カチオン重合の基礎から始まり,リビングカチオン重合の進展,そして最近の展開として星型ポリマーを中心に概説する。

  • 遠藤 剛, 須藤 篤
    2017 年 38 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 2017/01/10
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    開環重合はネットワークポリマーを合成するうえで極めて重要な方法論であり,(1)ヘテロ原子やそれらを含む官能基をもつポリマーが得られること,(2)環のサイズや構成原子によってモノマーの反応性が変わること,(3)リビング重合法を適用できる可能性があること,(4)平衡重合性が顕著な場合が多いこと,そして(5)重合時の体積収縮が小さい,などの特長から,種々の機能性・高性能ネットワークポリマーの開発に利用されてきた。 本稿ではそれらの現状を解説し,将来展望を論ずる。

  • 松村 吉将, 落合 文吾
    2017 年 38 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2017/01/10
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    閉環(環化)重合は高分子主鎖に直接環状構造を構築する上で有用な手法である。環構造を有する高分子は一般的に,剛直さや高密度を利用して高強度材料などに用いられている。さらに,他のイオンや分子などとの特異な相互作用を発現し得ることから,分子認識材料,分子捕捉剤,クロマトグラフィーの固定相などとしての応用も検討される。熱力学的に有利な小員環の形成を伴う閉環重合は比較的容易であるが,大員環構造の形成を連続的に伴う重合の達成には十分な分子設計を要する。さらに分子認識などの機能を付与するには,より精密に環構造を設計する必要がある。そこで本稿では閉環重合,中でも特に大員環構造の形成を伴う重合を紹介する。また,得られるポリマーの分子捕捉能などの機能についても併せて解説する。例えば,クラウンエーテルに類似した環構造を有するポリマーは各種金属イオンやアミノ酸などの分子捕捉能を示す。さらに,捕捉する分子の光学活性に応じて,一方向のらせん構造がポリマーに誘起される例など高次の構造の発現についても併せて紹介する。

  • 竹内 大介, 小坂田 耕太郎
    2017 年 38 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2017/01/10
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    遷移金属触媒によるオレフィンの重合について,その基礎および最近の進歩を概説した。オレフィンの重合にはZiegler-Natta 触媒をはじめとする遷移金属触媒が用いられている。均一系の金属錯体触媒では配位子を設計することにより様々な立体規則性や共重合組成をもつポリオレフィンの合成が可能になっている。ネットワーク構造をもつポリオレフィンの合成と,それらのエラストマーとしての応用についても紹介した。

  • 井本 裕顕, 田中 進, 中 建介
    2017 年 38 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 2017/01/10
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    元素の特徴を反映した多彩な機能を発現する最小単位を「元素ブロック」と定義し,それを高分子化・集積化することによって新たな材料を創出しようとする研究が盛んに進められ,共役系に組み込まれる元素は非常に幅広くなっている。さまざまな無機元素を有機骨格に導入するためには,有効な炭素との結合反応の開拓と,生成する分子の安定性を確保することが不可欠である。代表的な無機元素-炭素結合形成反応は,有機金属試薬との求電子置換反応・求電子剤との求核置換反応・ヒドロメタル化反応や,ビスメタル化反応などが挙げられる。また,無機元素の中には高い反応性を示すものもあり,重合反応系中や合成後に思わぬ副反応によって望みの高分子が得られないことがある。無機元素含有共役系高分子の創出には,従来の高分子を得るための分子設計・重合法とは異なるアプローチが必要になる。本稿では,急速に進展している無機元素含有共役系高分子に関して,特に有機ホウ素,ケイ素,ゲルマニウム,スズ,リン,およびヒ素を用いた例についてそれらの合成法と特徴について紹介する。

  • 古川 睦久
    2017 年 38 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2017/01/10
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    ポリウレタンは重付加反応で製造される代表的高分子であり,フォーム, エラストマー,弾性繊維,人工皮革,塗料,粘接着剤,シーリング剤,土木建築用材,レザー・微孔性ゴム等として工業材料,医用材料,農業水産用材料から家庭生活材料として幅広く使用され,我々の生活に不可欠な材料となっている。本稿では,イソシアナートの反応と反応機構,重付加理論,ポリウレタンの設計因子について概説する。

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