ネットワークポリマー
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ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂の特性研究
小椋 一郎北沢 清一小林 紀男
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1996 年 17 巻 2 号 p. 69-76

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抄録
近年半導体の実装方法やパッケージ形態が急速に高度化している。またこの技術革新に伴い, エポキシ樹脂封止材料に対しても, 高性能化への要求が益々高まっている。これに対応するため, ユニークな分子骨格を有する新規エポキシ樹脂の開発検討が活発に行われているが, 本研究者らも分子構造中にジシクロペンタジエン (DCPD) 骨格を含有したエポキシ樹脂を開発した。このエポキシ樹脂は, 優れた耐熱性, 吸湿特性, 電気特性, 密着性などを硬化物に付与できる。そこで今回DCPD型エポキシ樹脂の硬化物に, これらの優れた諸特性が発現する原因の解明を行った。
解明方法として, 4種類のDCPD骨格濃度が異なるエポキシ樹脂試料を合成し, DCPD骨格濃度と諸特性の関係を検討する方法を採用した。その結果, 興味深い種々の現象が確認された。まずDCPD骨格濃度の増加に伴い, 架橋密度が実質的な増加を示さないにも拘わらず, Tgの大きな上昇が確認された。またDCPD骨格濃度の増加とともに, 誘電率と誘電正接の低下も認められた。
Tgの増加の理由は, DCPD骨格の持つ剛直性と大きな立体障害に因る三次元網目鎖のミクロブラウン運動の抑制力が非常に大きいためであると考察した。また低誘電率は, Clausius-Mossottiの誘電率理論に則り, 分子量が高いDCPD骨格がもたらす低水酸基濃度 (低モル分極率) と, バルキーな立体構造がもたらす高モル体積が原因であると考察した。また低誘電正接と低吸湿率は同様に低水酸基濃度が原因であると考察した。
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