大脳の底面と内側面で認知的処理と関連する領域の多くは,脳の後方,すなわち後頭葉や側頭葉,頭頂葉にある.その下方の内側底面では,おもに視覚に関する認知的処理が行われる.損傷によって大脳性色覚障害,統合型視覚性物体失認,失認性失読,相貌失認,街並失認,物品の形イメージ喚起障害,物品の色のイメージ喚起障害が起こる.最前部の損傷では健忘が起こる.上方の内側面では,左の脳梁膨大後域損傷で健忘,右の脳梁膨大後域損傷で道順障害が起こる.両側あるいは左側の楔前部の損傷では,ゴールに向けて自分が行っていることやその時の状況を把持することの障害が起こる.これらの事実から,認知的処理における大脳底面・内側面の役割を推測した.