2022 年 38 巻 1 号 p. 36-43
脳の障害や変性疾患に伴う炎症反応に応じて,グリア細胞は活性化し,炎症性サイトカインの関連遺伝子とともに,18 kDa translocator protein(TSPO)とよばれる受容体の発現が促進される.生体内におけるグリア細胞活性化の評価のために,TSPOに特異的に結合するPET放射性薬剤が開発され,これを用いたTSPO-PETイメージングが神経炎症の評価に使用されてきた.本稿では神経炎症とグリア細胞の活性化について論考し,TSPO-PETイメージングの開発状況について記述し,自験例を含めADおよびAD前駆状態におけるPET炎症イメージングから得られた知見について検討する.