論文ID: 17252
左島皮質を中心に放線冠まで拡大した脳梗塞により複雑幻視が発現した症例を報告した.症例は60歳代男性.トーテンポール様の鳥と一般的な枕が視野全域に動きを伴い現れ,幻視に異常な情動的反応を示した.経過中に鳥は消失し,枕の数と出現頻度も減少したが,情動的反応は一貫性を保ち,むしろ増強していた.退院時には選択性注意障害が残存し,幻視も持続していた.幻視の発現機序として,島皮質損傷による記憶情報と知覚情報の統合障害の可能性が考えられた.また,情動的反応の変容については,選択性注意障害に起因する視覚情報処理および情動調節の困難が関与した可能性も考えられた.