抄録
本稿では、国産養殖ウナギの産地での賞味を目的としたフードツーリズムに着目し、静岡県榛原郡吉田町の国産養殖ウナギを事例として、ウナギとフードツーリズムに関する予備的な調査を行った。その結果、フードツーリズムという用語の認知度はあまり高くはなかったものの、フードツーリズムと呼べる旅行に行ったことがあるとする回答は比較的高く、食を意識した観光が広がっていることが確認出来た。一方、ウナギは他のご当地料理と比較してフードツーリズムの対象として意識されている順位が低く、産地としての地域性もあまり重視されていないことも分かった。ただし、ウナギは国内産のニーズが高く、地産地消が美味しいと思う意識も高く、特に社会人女性にその傾向が強かったので、社会人女性を主なターゲットとしたウナギのフードツーリズムの発展可能性を見いだすことが出来る。単なる食事だけではなく、養鰻場の見学をはじめ、吉田町の観光資源に物語性を連動させたツアー企画の工夫など、現地を訪れたくなる付加価値を高める工夫も求められる。