主催: 日本薬理学会次世代の会
会議名: 次世代薬理学セミナー 2023 in 沖縄
回次: 2
開催地: 沖縄
開催日: 2023/10/07
多くのイオンチャネルは制御サブユニット(auxiliary subunit)と複合体を形成することで多様な生理的機能を獲得する。我々は、これまでに電位依存性K+チャネルKv4複合体の電位依存性とゲート開閉の機能制御機構をクライオ電子顕微鏡によって明らかにした(Kise et al., Nature, 2021)。今回は、電位・Ca2+依存性K+チャネルSlo1複合体の電位依存性、Ca2+依存性の制御機構を報告する。Slo1はβ1-4やγ1-4制御サブユニットと複合体を形成し、電位・Ca2+依存性やキネティクスが多様に変化する。特に一回膜貫通型タンパク質γ1がSlo1と複合体を形成すると、電位依存性が大きく過分極側へとシフトすることで、非興奮性細胞においてもSlo1が機能する。Slo1-γ1複合体は分泌上皮細胞などで発現し、分泌液中にK+を放出することで免疫機能などに関わることが示唆されている。本研究では、Slo1-γ1複合体のクライオ電子顕微鏡構造解析と電気生理学的解析によってγ1によるSlo1の制御機構を明らかにすることを目指した。その結果、γ1の膜貫通領域がSlo1の電位センサードメインと相互作用し、これまでに報告されている電位依存性イオンチャネル複合体とは異なる機構で電位感知の中心的役割を担うS4ヘリックスを脱分極状態で安定化していることが分かった。また細胞内領域ではγ1のArgクラスターがSlo1のCa2+センサードメインと相互作用し、Ca2+結合状態を安定化することによって、Slo1の電位依存性が制御されることが分かった。さらに、これらの相互作用によって、γ1が従来知られていた電位依存性だけでなく、Ca2+依存性も制御することを明らかにした。
また、我々のクライオ電子顕微鏡を用いた創薬への取り組みについても紹介する。