抄録
銅製の横向き伝熱面を用いて、水のサブクールプール沸騰中で蒸気泡が伝熱面を離脱する様子を観察した。個々の気泡を詳細に観察するため、実験は主に孤立気泡域で行った。実験の結果、伝熱面の表面性状により、質的に全く異なる2種類の気泡挙動が観察された。エメリー紙を用いてよく研磨した接触角の大きい面(低濡れ面)では、気泡は伝熱面上にきわめて長期間付着状態を継続し、この間、伸縮運動を繰り返した。一方、ナノフルイド中で表面処理するなど、いくつかの手法で濡れ性を高めた面では、沸騰核における形成の後、気泡は水平方向に運動して伝熱面を速やかに離脱するとともに、サブクール水中で急速に凝縮・消滅した。以上の結果より、サブクール沸騰中の熱伝達率およびボイド率には、伝熱面の表面性状が大きく影響する可能性が示された。