抄録
盛期中高ドイツ語叙事文芸における、いわゆる「古典」と呼ばれる叙事詩人の中に、自らの文芸観を吐露するにあたり"wilde maere"という語を用いた詩人たちがいた。これは先行研究においてもしばしば論議の的とされてきた問題である。更に13世紀中葉以降に活躍したコンラート・フォン・ヴュルツブルクの叙事詩中にも、形容詞"wilde"の頻出する傾向がみられる。本論では、こうした事実に基づき、12世紀中期から13世紀中葉前後の中高ドイツ語叙事文芸における形容詞"wilde"の意味領域を考察し、特に"wilde maere"の再考を試みるものである。