語学教育に於ける教授法には様々あるが、教授時に学習者の母語を使う教授法と使わない教授法に大別できる。前者は言語横断的な教授法であり、代表例には文法翻訳法が挙げられる。また、後者は一般に直接法と呼ばれ、「言葉と観念を直接結合させ」ることを重視するとしている。(日本語教育学会(1990)p.107)近年、コミュニケーション能力育成を重視する言語教育に於いては直接法が重用され、文法翻訳法が省みられることは少ない。しかし、文法翻訳法はもはや過去の遺物としてしまってもよいものだろうか。本論では大学課程あるいは大学予備教育課程に於ける語学教育を念頭に、文法翻訳法と直接法の特徴と功罪をまとめ、言語教育に於ける文法翻訳法と直接法の関係について述べたい。