日本文学
Online ISSN : 2424-1202
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島尾敏雄「死の棘」の文体
根岸 正純
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1984 年 33 巻 10 号 p. 16-24

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抄録
島尾敏雄「死の棘」の文体の著しい特徴は、大半の文の文末が現在形で結ばれ、また、無力感を表わす「てしまう」、外力の接近を暗示する「てくる」、疑惑を示す「不審だ」などの特定の語や、物事を消極的に捉える打消などが多い。それらは不確定の意識を前後の文脈に底流させ、事件や情景はその意識の中で再編されて、意識の進行を中心にした文体を作り上げている。そして独白に似て小刻みに独白の放棄をくり返す特異なリズムをもつ。
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© 1984 日本文学協会
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