1985 年 34 巻 11 号 p. 1-11
萩原朔太郎の創作した詩群「青猫以後」は詩集に準じて扱われるべき独自性をもっている。「青猫以後」は前後二期に分けて取扱える。そして、前後二期のそれぞれが、ヴィジョンを意識した作品を軸に構成されている。そのヴィジョンは作者が幼年時代に見たパノラマ館の風景に示唆されて構想されたものである。その幻想風景を虚無的な作者の現実意識によって反転させ、作品化したところに「青猫以後」の独自な世界が成立した。特に、その現実意識は、後期に至って、一人称「わたし」「おれ」が作中に示されることで露骨になっている。