日本文学
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しろ花 黄い花 : 『春のいそぎ』私論
米倉 巌
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1985 年 34 巻 6 号 p. 33-43

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抄録

伊東静雄は状況を先取りするような詩人ではなかった。第三詩集『春のいそぎ』に収録された戦争詩も、したがって当時の「大家」のそれと違って状況に参与していくようなものではなかった。『春のいそぎ』の特色は、むしろくしろ花 黄い花》といった詩句で、代置できる所謂「家庭詩」に見るべきである。伊東はそれらの詩を佐藤春夫やラフカデオ・ハーンの影響で書いた。そして、そこにこそ当時の伊東の精神的な安らぎがあったといえる。

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© 1985 日本文学協会
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