日本文学
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虚構のなかのアイデンティティ : 『雁』(<特集>近代文学における<虚構>と<自我>)
田中 実
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1986 年 35 巻 10 号 p. 12-22

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抄録

『雁』は「釘一本」の偶然で岡田とお玉の恋が未成に終ったというメッセージと、未成に終わるのは必然だったというメタメッセージから成立しているが、その手の込んだ構造が何故必要だったのか、その理由を説き明かす。『雁』は「僕」という<書き手>の<手記>であり、その<手記>のなかに<青魚の未醤煮>というメロドラマ(物語)があり、そうした<メロドラマ>を抱えた<手記>を「鴎外」という<作者>が<小説>として<読者>に送ったのである。

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© 1986 日本文学協会
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