日本文学
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『月に吠える』形成の一側面 : 表現の場における自我意識の在所(<特集>近代文学における<虚構>と<自我>)
阿毛 久芳
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1986 年 35 巻 10 号 p. 24-32

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抄録

萩原朔太郎が近代思想を自覚的に意識したのは、厨川白村著『近代文学十講』によってであった。朔太郎は自己同一性の根拠にあたるものを、この概論書から嗅ぎ出していたのである。<自我のリズム>や、『月に吠える』から『青猫』への心的傾向を示唆する個所さえある。これらを踏まえながら、『月に吠える』の形成過程において<人><物象><神>と<我>との接触感と不在感、そして<我>と<我>との接触の様態を考察し、自我意識と虚構の問題への接近を試みた。

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© 1986 日本文学協会
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