日本文学
Online ISSN : 2424-1202
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『党生活者』論 : 異常空間からのメッセージ(<特集>近代文学における<虚構>と<自我>)
前田 角蔵
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1986 年 35 巻 10 号 p. 33-45

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抄録

『党生活者』は平野謙のつくりあげた読みの枠組の中でこれまで論じられてきた。この枠組をどう破るかが一つの課題である。そのためにはまずこの作品の構造を正確に分析する必要がある。『党生活者』は、地下生活という異常空間に生きる「私」のドラマであるが、実は三つの言語空間から成立している。われわれの読みは、言語空間の一つである地下生活の異常空間からの「私」のメッセージをどう解読するかであり、それが構造のうちに歪められている「私」に光をあてることである。

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© 1986 日本文学協会
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