日本文学
Online ISSN : 2424-1202
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観察する「私」・行動する「私」 : 小林多喜二『東倶知安行』の語り手(<特集>語り手の位相)
島村 輝
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1988 年 37 巻 1 号 p. 79-88

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抄録

従来ルポルタージュ的な作品として評価されてきた小林多喜二の小説『東倶知安行』は、観察者としての「私」と行動者としての「私」という、二面性を持った語り手の、転換と相互浸透のバランスの上に成立した作品である。高く評価されている自然描写も、このような精密な語りの技法に裏付けられて、そのリアリティーを発揮している。この語り手のバランスが、次第に崩壊していくところに、この時代、この作者のかかえていた課題の大きさが示されている。

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© 1988 日本文学協会
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