日本文学
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中世の王権神話(日本文学と天皇制,文学の部,<特集>日本文学協会第44回大会報告)
桜井 好朗
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1990 年 39 巻 3 号 p. 13-21

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抄録

大祓とは、「現神(あきつかみ)」である天皇が「瑞穂の国」を支配するという王権-国家神話を前提とし、その支配を妨害する要因を除去する祭儀であった。大祓の祝詞はそのような祭儀の言語的表現である。中臣祓は大祓の祝詞を個人のためにおこなわれる祭儀の言語的表現に変換した。さらに『中臣祓訓解』は中臣祓に注釈を加え、祓えの言説は仏教的・密教的な意味での個人の悟りのために書かれたと解釈し、王権-国家神話の構造を解体した。しかし『中臣祓訓解』の注釈の仕方の中には、新しい中世の王権神話が芽生える可能性もひそんでいた。

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© 1990 日本文学協会
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