日本文学
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方法の小説あるいは後藤明生の華麗な冒険 : 『壁の中』へ(<特集><批評>の視線-近代文学における<他者>と<天皇制>を手がかりに-)
中澤 千磨夫
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1991 年 40 巻 11 号 p. 44-56

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抄録

後藤明生の『壁の中』は、<小説の小説>として、世界の最前線に位置付けられる。その要諦を二点挙げる。まず、小説という枠組を拡大したこと。具体的には、小説内で本格的な文学論が展開されていることである。本来、小説はかなり自由な(ルーズな)ジャンルであったはずで、本小説はかような地平を回復した。次に、本小説の結構自体が、長編小説の生成の一つの秘密を明かしていることである。それは、連続せる逸脱に、筋を展開させる力を持たせることであった。またこれは、方法自体を小説化する冒険でもあったのだ。

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© 1991 日本文学協会
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