日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
『太平記』という反<物語>・反<歴史>(<特集>中世的秩序-言説と公共性-)
大津 雄一
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 44 巻 7 号 p. 56-66

詳細
抄録

『大平記』は、<物語>というイデオロギー装置を使って、<歴史>をきまじめに語りながら、不意に<物語>を機能不全に陥らせて、<物語>のイデオロギー性を露呈させ、<歴史>を語る事の不可能性・欺瞞性を自ら暴露して見せる。その反共同体的な姿勢が、『太平記』の真のラジカルさであり最大の魅力である。『太平記』は、自己の意識・自己の世界・共同体の秩序を問題化する批判的自意識を養う場となり得るテキストである。

著者関連情報
© 1995 日本文学協会
前の記事 次の記事
feedback
Top