日本文学
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テクストと百科事典 : 谷川俊太郎『定義』再読(<特集>日本文学協会第五一回大会報告(第二日目))
中村 三春
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1997 年 46 巻 4 号 p. 1-16

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抄録

『定義』は冒頭に百科事典からの引用文を置きながらも、指示の不可測性、表意体(シニフィアン)の戯れ、反復表現による意味内容の無化などの領域に読者を引き込み、<定義>を不可能にしてしまうパロディである。しかし、それは単なるニヒリズムではない。『魂のいちばんおいしいところ』などを補助線とすれば、そこには言葉がメッセージ伝達の機能ではなく、コンタクト(接触)の回路を敷設することによって、人と人との間の繋がりを築くことの信念が読みとられる。

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© 1997 日本文学協会
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