1998 年 47 巻 5 号 p. 60-68
『松浦宮物語』と同じ渡唐物語である『浜松中納言物語』の中で、渡唐後「そのありさまども、唐国といふ物語に絵にしるしたる同じ事なり」とある。散佚物語の『唐国物語』絵巻の世界と同じであったと語っている。唐土を知り得なかった物語作者たちが、どのように渡唐の物語を描き得たのか。『浜松』が『唐国物語絵』であったのに対し、『松浦宮』では『吉備大臣入唐絵』ならびにこれと関わる『江談抄』・『吉備大臣物語』、そして『続日本紀』が伝える「吉備真備の薨伝」、その他の真備説話から『松浦宮物語』への階梯をたどる。