日本文学
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「読み」のベクトル : 『おにたのぼうし』の場合(<特集>日本文学協会第57回大会報告(第一日目)・総会)
鎌田 均
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2003 年 52 巻 3 号 p. 13-25

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抄録

日々の自分の教室を振り返ってそこから一体何が語れるだろうか。何もない。少なくとも今の私の眼にはそう映る。それでも毎日、私は"授業"をし続けている。「困難校」と呼ばれる学校の現状とほぼ変わらぬ様相を呈し始めている現場で。そんな現実を前にしていると高邁な理論が空疎なものに思えてしまう時がある。相当に疲れていて絶望的な気分に陥っている時などにである。しかし、ふと気づいてみると、やはり、文学作品の読みで現状をなんとかしようとしている自分がいる。それはなぜなのか。具体的な道が先に開けて見えるわけではない。安直に光を求めてはいけないようにも思える。まるで長いトンネルを掘り続けているような作業の繰り返しである。だが、この作業にはある方向性が意識されているはずである。作品を読み返す作業、これは何に向けて繰り返されるのか。そのことへのこだわり。そんな私のこだわりを具体的な作品を例に挙げて考えてみたい。

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