日本文学
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大殿祭にみる忌部の祭儀実践 : 木鎮め祭儀と屋船命(<特集>古代文学における<環境>)
北條 勝貴
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2004 年 53 巻 5 号 p. 20-35

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抄録

大殿祭は、忌部(斎部)宿禰の主催する希有な宮廷祭祀である。「大殿祭祝詞」や『古語拾遺』は、同祭が、山中での採材から柱立てに至る一連の伐木・建築祭儀と内的連関にあることを主張する。事実、伊勢神宮の年中行事や遷宮諸祭、大嘗祭にも、これと同種の儀礼体系が共通して存在し、忌部の関与が濃厚に確認できる。これら忌部と樹木との密接な関係は、忌部宿禰の品部である紀伊忌部が同国固有の環境において醸成してきた、樹木に宿る宗教性(木霊・山神の力)を殿舎の守護神へ転化する、木霊鎮めの技法に基づいている。「祝詞」にのみ登場する大殿祭の祭神屋船命は、忌部が樹木との直接的交感を通じて生み出した独自の神格であり、「事問ひし」自然との葛藤を体現する物語りなのである。

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