日本文学
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貞慶『春日権現講式』の信仰世界 : 春日社・興福寺における中世神話の生成をめぐって
舩田 淳一
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2004 年 53 巻 6 号 p. 21-32

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抄録

中世の春日社・興福寺には、天岩戸・国譲り・天孫降臨神話の多彩なバリエーション、即ち「中世神話」が存在した。貞慶作『春日権現講式』の一段には、『建久御巡礼記』に見られるような「二神約諾」という政治的神話から、神代の衆生済度の文脈へとシフトした天岩戸の言説が刻印されており、貞慶の神祇信仰に占める日本紀の射程という問題が浮上する。さらにそこから貞慶の手になる五段と三段の二つの『春日権現講式』の構造を分析し、書誌学的には五段武から三段式が派生したとされるが小稿では、同文箇所の多い両講式であるが、それぞれに異なる信仰世界を構築しているものとする見解を示した。

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