日本文学
Online ISSN : 2424-1202
Print ISSN : 0386-9903
特集・環境としての自然・風土
気象によせる関心
―― 古代の「雪」 ――
兼岡 理恵
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 62 巻 5 号 p. 2-9

詳細
抄録

環境をどのように表現するか。特に自然環境においては、実際の景・事象を客観的に描く立場と、理想の景・イメージとして文芸的に表現する、という二つの立場がある。古代散文における雪の記事をみると、たとえば六国史の雪は、災厄の予兆・雪害から儀式に関するものへと変容しており、朝廷における雪への関心の変化が窺える。一方『摂津国風土記』逸文には、鹿の背に積もる雪が塩の譬喩として表現されるが、その聯想の背景には、野に降り積む雪の文芸的イメージ、さらに同地の地理的環境がふまえられており、文芸的観点から雪を描いた記事といえる。

著者関連情報
© 2013 日本文学協会
次の記事
feedback
Top