日本文学
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暴風・狂気・チェーホフ
――「蒲団」執筆の背景とモチーフ――
小堀 洋平
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2014 年 63 巻 12 号 p. 10-21

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抄録

本稿は、田山花袋「蒲団」執筆の背景とモチーフを、主として比較文学の観点から考察するものである。はじめに、「蒲団」執筆中の一九〇七年七月末から八月初めにかけて、花袋が編集に従事していた『文章世界』八月号の読者投稿欄を手がかりに、チェーホフの英訳短篇集『黒衣の僧』に対する花袋の関心を実証する。その上で、国木田独歩「都の友へ、B生より」をはじめとする同時代テクストとの比較を通して、「蒲団」における「暴風」というモチーフが、チェーホフの影響下に「狂気」の象徴として用いられた可能性を検証し、「蒲団」の新たな側面に光を当てることで、従来とは異なる読解の方向性を提示する。

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