2014 年 63 巻 4 号 p. 2-9
ベルリンの壁などの国境に代表される、社会における膜の存在理由を検討するときに、生命システムの起源である細胞から考えていく必要がある。生命の理論であるオートポイエーシスから膜による資源の取り込みを検討すると、細胞の進化プロセスの中でネットワーク(網)から膜や核が幾度となく生成されることをみてとることができる。人工物としての文学の意義は、多数の個体がもつコンフリクトを解消するための文脈を提供することであるが、情報技術によって異なる現実を生きる「パラレルワールド化した世界」の登場によって、文学の新たな可能性が試されることになるだろう。