日本文学
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特集・日本文学協会第69回大会(第二日目) 教科書と文学
教材としての「古文」と作品としての「古典文学」
小助川 元太
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2015 年 64 巻 4 号 p. 11-20

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抄録

高校時代に古文が嫌いだったという大学生は多いが、大学受験をしない生徒を含む現役の高校生になると、その数はさらに増えるであろう。その原因は様々であるが、突き詰めていえば、教室で読む「古文」に魅力がない、面白くない、というのが一番の理由であろう。ところが、「古典文学」というコンテンツそのものが今の若者にとって全く魅力のないものかといえば、実はそうでもないようである。たとえば、百人一首をテーマとした漫画『超訳百人一首 うた恋い。』などは高校生や大学生の間でかなりの人気を博している。実際には、現代を生きる若者の心にも響く魅力的な「古典文学」は多く存在しているのだが、教材として教科書に掲載できる(あるいは掲載を求められる)作品には、教育現場における制約(教育的配慮・受験への配慮、分量、配当時間など)があり、その種類が限られてしまうというのが現状である。今後「古典文学」の魅力を若者に伝えていくためには、今や若者たちと「古典文学」との唯一の出会いの場となっている、教科書の「古文」の内容や扱い方を見直していく必要があるのではないか。

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