東京大学大学院
2016 年 65 巻 3 号 p. 78-90
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本稿では、一九三〇年前後の犯罪報道に多様な形態で召喚された探偵小説ジャンルが、善悪の境界を揺れ動く両義的な位相に置かれていたことを明らかにし、その具体的な事例として玉の井バラバラ殺人事件の報道言説をめぐる江戸川乱歩の表象を検討した。さらに、犯罪ジャーナリズムにおいて乱歩とは異なる位相に置かれた浜尾四郎の表象と、その後の実践との連関の分析を通じて、個別のテクストとメディア環境との往還運動として現出するジャンルの動的な様態の一端を示した。
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