日本文学
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『津国女夫池』寛保二年再演における修訂の意味
谷口 博子
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2016 年 65 巻 6 号 p. 12-23

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抄録

『女夫池』の寛保二年再演時に出版された修訂板は、原作にはない固有の増補本文を有する。そこには自らの罪によって浄土へ至る白道を渡り得ず、水河と火河の二河に堕ちて苦しむ大淀の姿が描出されていた。それは『女夫池』で近松が「実は」の展開で明らかにした大淀の〈心底〉の舞台化であり、近松が言葉で表現したものを、人形の動きとして二河白道を利用して描出したのである。増補本文に見える大淀は女らしい優しさと深い罪業を併せ持ち、人間的な深みが見え、近松が描いた大淀像をさらに深めていた。

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