2018 年 67 巻 2 号 p. 12-22
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「熊野へ参らむと思へども、徒歩より参れば道遠し、すぐれて山峻し、馬にて参れば苦行ならず、空より参らむ羽賜べ若王子」(梁塵秘抄・二五八番歌)の末句「空より参らむ羽賜べ若王子」は、従来では八咫烏或いは飛行夜叉が着想源とされていた。だが、それらからは羽が生えて飛んでいく人間の姿が想起されない。翼が生え浄土に飛んでいく話型の院政期の往生譚が着想源だと考えられる。院政期の往生譚から人間が羽で飛翔する意味を読み解くことによって、当該歌の重層性も浮かび上がってくる。
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