2006 年 130 巻 p. 42-51
本稿は近年日本語教育研究においてよく利用されているKYコーパスの特性とそれを利用した研究について述べる。KYコーパスは英語,中国語,韓国語を母語とする日本語学習者合計90人(各言語30人:初級5人,中級10人,上級10人,超級5人)に対して行なったOPI (Oral Proficiency Interview) データを文字化し,コーパスとしてまとめたものである。日本語教育において標準的能力判定のついた会話データはOPIしかなく,さらにそれがコミュニケーションの達成を目指した自然発話であるのは大変魅力的なことである。しかし,OPIデータの「自然さ」は決して漫然とした発話のそれではなく,測定という枠中のものであるという認識が必要である。また,能力判定が総合的判断によるものであることも注意が必要である。コンピュー夕処理が今後進められる中,このようなコーパスの特性についての認識は必須の要件である。